なちかつ
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 家族のあたたかさを描いた絵本。林明子さんの絵は正確さというより誠実さをもって、細大もらさず写実的に描かれていると思う。やわらかくあたたかみのある絵が強い個性を放っている。

 文に書かれている以外のこと、たとえば登場人物がどんな服を着ているとか、家の間取りや調度など、とても多くのことは実は画家に任されているのだと思った。林明子さんは絵にいろいろな仕掛けや隠し味を加えながら、楽しんで仕事をしているのではないか。一枚一枚の絵をそのように見ていくとこちらも楽しい。表紙の絵、女の子が赤いリボンのついた手紙をもって、朝ご飯を食べているお父さんとお母さんのそばをそーっと通っていく。その小さな手紙は作品を貫く重要なアイテムだ。読み手はこのあとお母さんといっっしょに、場面ごとそれをさがすことになる。とびらの絵、女の子は手紙をお父さんのジャケットのポケットへこっそり入れている。お父さんとお母さんに気付かれないように。最初の場面、まんまとやりとげた女の子は、してやったりのニコニコ顔で学校へ。そうしてこの家族にとっての特別な「きょうはなんのひ」が始まる。7枚目の手紙を見つける場面、お母さんもこの遊びにちょっとくたびれてきたのだろう、左手を後ろのいすの背もたれにのせ、エプロンの肩ひももずれている。さて、いよいよお父さんも帰ってきて特別な日のクライマックスを迎える。あれ、お母さんはその日一日はいていた靴下をはいていない。よく見ると、色合いは同じだが服も着替えているのに気がついた。女の子がこたつ布団で顔を半分おおっている表情も、満足感と幸福感にあふれていて見事だ。絵本作家ってすごいなあと感心した。

 林明子さんの絵本は他にもたくさんあります。 

2024年 (令和6年)
12月26日(木)
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