著者は1967年生まれの社会学者で沖縄を研究の対象にしている。この本は、著者が長年沖縄に関わるなかで問題意識にあがってきた “沖縄について考える” とはどういうことかを語ったものだ。沖縄が歩んできた、あるいは歩まされてきた歴史をふまえ、本土の人びとと沖縄の人びととの非対称的で不平等な関係を冷徹に見つめ続けた結果、そのような問題意識を持ったことに、著者の人としての誠実さを感じた。
「沖縄の独自性を、単なるラベリングやイメージに還元しないこと。~に還元するような本質主義的な語り方を、一切やめること。そして、できるだけ世俗的に語ること。沖縄の人びとの多様な経験や、基地を受け入れさえするような複雑な意思を、そのままのかたちで描きだすこと。さらに、そうした多様性を、沖縄と日本との境界線や、日本がこれまで沖縄にしてきたことの責任を解除するような方向で語らないこと。」「今だ発明されていない。沖縄の新しい語り方が存在するはずだ。」