コロナ禍のため長く休校が続いている。小中学生のみなさんには、こんなときこそすぐれた児童文学作品にひたる時間があってもいいと思う。ちょっと手に取るのがためらわれるような分厚い本。500ページの長編だ。でも、読み進めると、長編だから味わえる濃厚な物語世界が立ち上がってくる。ゆっくり、ゆったりその世界にいればよい。そんなぜいたくな時間を過ごしませんか。「ハイジ、知ってるよ」と言う人、原作は読みましたか。原作を読んでみると「知ってる」の中身が変わる。その驚きと感動を。
物語の後半はあらゆることがよい方へよい方へと展開し、幸福感でいっぱいになる。ハイジという神の心をもった少女によって、まわりの者すべてが救われ幸せになっていく。子どものための物語としてすばらしいと思う。読者は、前半部で語られるさまざまな苦難をハイジといっしょになって乗り越えるからこそ、物語の終わりで大きな喜びを感じることができる。話の中に入れば読み通すのはまったく苦にならないこの物語を、できるだけ多くの子どもたちに勧めたい。
図書館にはありませんが、2003年上田真而子訳の岩波少年文庫版(上下巻)も読みやすい日本語訳でおすすめです。