昭和30年代生まれの自分には昭和33年がそう遠い昔とは思えない。しかし、その年売春防止法ができるまで、江戸遊郭のイメージで前近代的な遠いことのように思えた売買春は合法だったということか。禁止法ができたからといってそれがスパッとなくなったわけではない。そりゃそうだろうと思う。公娼は消えたかもしれないが、しぶとく非合法の私娼は続いた。でも、驚いたのは274ページの写真。2005年黄金町界隈を撮ったその写真に、「売春飲食店を撲滅し、明るく住み良い街に」という啓発看板がでかでかと写っている。バイバイ作戦と名づけられたこの地域浄化運動が始まるまで、黄金町を中心に250軒の店舗、約500人の“女たち”がいたという。
本書は、敗戦直後の横浜で発生した社会問題である混血児の問題を掘り下げている。筆者の言う戦後横浜の闇は、米軍を中心とする占領軍が進駐してきたところから始まった。そしてその源流は、幕末、横浜が開港地になったところまでさかのぼる。この人間社会の深く暗い闇をつくりだしているのは何なのか。戦争、差別・偏見、貧困・・?同じ根っこの闇は、沖縄、東南アジアにもつながっている。