なちかつ
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 ブレグジットで揺れたイギリスのおっさんたちの話である。登場するおっさんはみな60代で著者の連れあいの幼なじみだ。著者言うところの“地べた”を生きてきた、れっきとした労働者階級のおっさんたちである。彼らの多くは今回のブレグジットで離脱票を投じ、まさかの結果をもたらした“裏切り者世代”と非難されている。しかし、おっさんたち一人一人にそれぞれの人生があり、それは英国が「ゆりかごから墓場まで」といわれた福祉国家から、現代の新自由主義社会へと変化した時代の流れと無関係ではない。本書の原題というか英語の書名は“Still Wondering Around The Wild Side (いまだにワイルドサイドをさまよっている)”となっている。still(いまだ)には、いい年をして成長しないという、おっさんたちへのあきれたようなニュアンスがある。また、wonderingをほっつき歩くと表現した著者は、そのおばちゃん感覚全開で、これら愛すべきおっさんたちへのウオッチングを試みる。英国のEU離脱を書いた本は数多くあるが、この本はまさに地べた、庶民の目線で現在のイギリス社会を描いている。それが不思議に日本のおっさんの共感を呼ぶ。

2024年 (令和6年)
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