江戸時代のお百姓は田んぼで米を作り、それを年貢として納めていた、と教科書には書いてある。けれど、勝浦のように田畑が少なく、漁業が中心だったと思われる地域では、人々はそんな教科書どおりの生活をしていたとは思えない。どのような村社会があり、どのような生業で、どのように税を納めていたのだろう。
本書は、江戸時代の文書が多数残っていた伊豆半島北西部の海村における人々のくらしや漁業の実態をていねいにたどったものである。古文書の多くは訴訟に関するもので、そこから津元(網元)と網子(零細漁民)の関係や対立の構図、村々の利権争い、領主の支配体制や租税のしくみ、都市商業資本との争いなどが具体的に見えてくる。