小さな島の小学校。3,4年生の複式学級に、4年生の女の子レイナがやってきた。今まで4年生で女子1人だった優愛はさっそく友だちになろうとするが、レイナはマイペースで少し変わった子。ませた言葉を口にしたり、自分の世界を長々としゃべったり。レイナは都会の児童養護施設からこの島へもらわれてきた子だった。以前にも一度途絶えたことのある里親との“ケイヤク”がまた破棄されるのではと、内心不安に思っている。そんなレイナが島での生活の足がかりを築き、心の不安も消えていく様子が、優愛の視線で描かれている。
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現代社会においてその国の「伝統文化」などと称されるものは、じつは近代化の過程で創られてきた新しいものだそうだ。日本社会の伝統なるものも明治以降に形成されたものが多い。著者は本書で、雇用や行政、教育や社会保障などから、日本社会を規定する社会意識がどのように形成されてきたかということについて論じている。論点がぶれない緻密でていねいな仕事だ。外国との比較で日本社会の特徴(年功賃金、企業内労働組合など)がよくわかる。
つい先日消費税が10%に上がった。賛否両論あまたある中で、妥協点、着地点をさぐりつつ社会は形成されていく。しかし、そこには正義と人びとの合意がなければならない。社会の「しくみ」とはそうして定着していったルールの集合体である。
長い読書の最後に課題が出された。スーパーの非正規雇用で働く勤続10年のシングルマザーが、「昨日入ってきた高校生の女の子となんでほとんど同じ時給なのか」と相談してきたという。これに対してあなたはどう答えるか。①年齢や家庭背景を考慮した賃金が支払われるべきだ。②同一労働同一賃金の原則により同じ賃金であるべきだ。③賃金については同じなのはやむを得ない。児童手当や社会保障政策で対応すべきだ。さて、社会の合意はどこに落ち着くか。
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最近になってわかってきた人間の皮膚の驚くべき働きについて書かれている。どんな生物も皮膚の構造や組成は基本的に変わらないそうだが、進化の過程でそれぞれの生物特有の形態を獲得していったようだ。科学者は、人間の皮膚がなぜ体毛を減らして露出するようになったのかということを考える。なんと皮膚には触覚以外に視覚・聴覚・嗅覚・味覚の五感があるそうだ。皮膚は可視光のみならず紫外線から赤外線まで感知でき、音については耳の限界の二万ヘルツを超えた超音波まで感知できるという。その皮膚の五感からもたらされる無意識の膨大な情報を統合するために人類は大きな脳を持った。それが現在のホモサピエンスへの道筋ではないかと。科学は壮大なロマンだ。
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