現在の国民栄誉賞は、本塁打世界記録を達成したプロ野球選手、王貞治さんをたたえるために創設された。しかし、王さんには日本国籍はなく、つまりは日本国民ではない! 王さんは日本人のお母さんと中国(当時は中華民国)出身のお父さんのあいだに日本で生まれた。彼はお父さんの国籍、すなわち中華民国籍を引き継いで有しており、日本国籍にも中華人民共和国籍にも変えようとはしていない。なぜなら、彼ほどの有名人が国籍変更をすると、それが政治的に利用されてしまうおそれが大きいからだ。日本代表監督としてWBC(ワールドベースボールクラシック)で優勝したとき、あなたは何人ですかと質問され、「国籍は中国ですが、心は日本人です」と答えたという。かくも国籍の問題は緊張をはらんだものである。
それは現代世界における国のあり方、「国民国家」に起因している。オリンピックもワールドカップも、はたまた戦争も国民国家がベースにある。そして国民国家はしばしばその構成員である国民に対して強い圧力を加えることがある。「私と国」との関係を切り口に、日本国内の問題から国際問題まで幅広く読み解く。
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自然写真家として身を立てたいと思っていた青年は、ある夜夢を見た。北国を思わせる針葉樹の森で一頭の立派なオオカミと出合う、そんな夢を見た。次の日、青年はオオカミのことをもっと知りたいと思い、近くの図書館へ出かけた。目にとまった一冊の写真集。『ブラザー・ウルフ』、その写真群に圧倒される。撮影したのは世界で最も著名な自然写真家のひとり、ジム・ブランデンバーグだった。「あの夢のオオカミが、この本へと導いてくれたのかもしれない・・」。写真家としてのジムのことを知るにつけ、尊敬の念とともに彼のもとで写真を学びたいという思いが募った。わずかな手がかりを頼りに、三ヶ月間のキャンプ支度をして、ジム・ブランデンバーグがいるアメリカ・ミネソタへ、ノースウッズへ、青年は旅に出た。
行動を起こすことで拓ける自分の道、そして、行動を起こすことで出会える人々。みずみずしい青春の軌跡。若い人たちにぜひ読んでもらいたい。
*ジム・ブランデンバーグ『白いオオカミ』も併せてどうぞ
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絵を楽しみながらゆっくりと読みたい。リゼッテおばあちゃんはたくさんの動物たちに囲まれて暮らしている、イヌのベロがけがをしたとき、やさしいおばあちゃんがほうたいをしてくれた。おばあちゃんの誕生日、動物たちはみんなで力を合わせてお祝いの準備を始める。失敗もしながらだんだん準備ができてくる。暗くなった夕方、おばあちゃんが家に帰ってきた。見開き画面いっぱいのすばらしいお祝いの絵は、にぎやかさとうれしさと幸福感にあふれている。さらに大好きなおばあちゃんへのお祝いの趣向は続いて・・。ところどころ読者に問いかけるような文と、その答えのような絵が描かれてあり、そうやって絵を見ていると登場人物たちが生き生きと動き回って立ち上がってくる。一見ラフに見える絵なのに、動物たちの表情や動きが見事に描かれている。
*特別展示「ロングセラーの名作絵本たち」から
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